「芸のある識別とは、の巻」
A・甚五郎の忘れ傘
「(京都・知恩院の)本堂の正面の東寄りの屋根下にある。名匠・左甚五郎が魔よけのため、わざと置いたものといわれ、古来、知恩院の名物になっている。実際は、寛永再建の際、時の住職・霊厳上人が弥陀の六字(南無阿弥陀仏)を記して火災よけにしたという」(『京都ゼミナー倶楽部』HPより)
───もしかしたら、甚五郎の心の中では、小さな自己主張だったのかも知れない。
B・オウンオピニオン
「1981年、第1回のジャパンカップにインド代表として選出されたオウンオピニオン。『ゾウと合わせ馬をした』『飼い葉にはカレー粉が入っている』等とまことしやかに噂され、ある意味注目を集めた。前哨戦として11月8日のオープン競走(芝1800m)に出走、それまで日本の競馬に外国馬が出走した例は一度も無く、記念すべき初の外国馬となった。結果は馬場が合わなかったのか大差の7着最下位。本番のジャパンカップは日本馬が歴史的大敗を喫する中、彼も15頭中13着に終わってしまった」(フリー百科事典『Wikipedia』より)
───インド代表らしく、インド女性が額につけるビンディーのように、額に赤いルビーが埋め込んであったのだ。
C・トラップストリート
「トラップストリートとは、地図作成者がそのオリジナリティを明らかにするため、原図に密かに書き入れておく偽の街路のこと。人がめったに足を踏み入れない袋小路の奥などにさりげなく書き込まれている」(戯曲『トラップストリート』別役実作)
───なるほど、いたずらではなく、著作権侵害を立証するための仕掛けだったのか。
D・明治女性の実印
「うちのお婆ちゃんは女手ひとつだったから、財産を守るために神経を張ってたのよ。重要な書類にハンコを捺すときなんか、シュッと髪の毛を一本抜いて、わざと実印と書類の間に咬ますのね。そうすれば、『自分が捺したという証拠』になるわけ。それを真似してか、母はハンコを買うと、まず、隅の方をちょこっと欠けさせるのよ」(還暦を過ぎた元芸者さんの話)
───こんな落とし穴があったのでは、悪漢が、いくらハンコを偽造してもバレてしまう。
E・ディープインパクト
「凱旋門賞に向けて調整されている5冠馬ディープインパクトに、国産馬として初めてマイクロチップ(MC)が埋め込まれた。(中略)馬の場合は、タテガミの生え際近くに埋め込まれる。安全で確実なもので日本でも来年度産駒から義務付けられる」(『日刊スポーツ』06年7月3日)
───ディープインパクトのそれは、「392111000000001」。武豊が乗れば証明できると思うのだが。
F・『ポケット判・カタカナ新語辞典』(斎藤栄三郎編)
「懺悔いたします。ボクが最初に入社した有紀書房という出版社で、初めて表紙のデザインを任されたのが、この辞典でした。本文をさまざまな形に切り分けてコラージュし、さまざまな色分けをしていくというデザインです。なにせ、初めて任されたのでうれしくなりまして、片隅に小さく緑色で『クリイワ』という文字を忍ばせてしまいました。目立たないようにしましたが、公私混同しました。申し訳ありませんでした」(栗岩太郎談)
───今でも定価935円(税込)で本屋に並んでいるのだ。恥を知れ、恥を。
カーカーカー。
【問い】
いろいろな「個体識別」の方法を取り上げましたが、この中で「もっとも芸のない方法」はどれでしょうか?
記号で答えなさい。
───たぶん、[F]が正解なのだろうなぁ……。
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