ひょっとして
「先週のことですが、どうやら悶(もだえ)のヤツ。ホットチリペッパーでも馬券をとったらしく、日曜日、京都でさらにもう一泊したみたいですよ」
栗岩太郎が、モニョモニョ。
なんで、わかるんだ?
「実は、月曜の夜。ボクのパソコンが不具合なので、悶のヤローに検診してもらったんだけど。その時おみやげに貰った赤福の日付が、月曜日だったもん」
鋭い。
「で、今週ですが。日曜日の東京の早春Sは、ギュスターヴクライ(一口もっている)で楽勝。もしかして、土曜日のミリオンディスクが勝っちゃったりなんかしたら、ひひひ。帯封が二つくらい、また転がり込んでくるな。長女の大学入学金も、これで楽勝——だって」
確か娘は、日本で一番東大入学者の多い、あの名門女子高生だったよな?
センターの一次試験も楽っく楽。東大も確定みたいなこと言ってたけど。
「でね。月曜日の夜、修理もすんだことだし、いっぱいやろうよと誘ったら、いえいえ、今日はまっすぐ家に帰りますって、ミョーにソワソワ。ひょっとして京都は、家族とは別の誰かと、一緒に行ったのかもしれませんね」
誰かって?
「もしかして、女とか」
やな奴だな。
「イヤな奴ですね」
なんて、あやうく栗岩太郎の邪推の誘い水に乗るところだったが、世の中は、あてずっぽうの噂話でも、そうやって口にすると、まことしやかな、ホントーのことみたいな話になるから怖い。
言葉というのは、意味を成さない言葉でも、繰り返し耳にすると、沈黙の真実より意味をもってくるもんです。
競馬も、脚が痛いだの、ワケありだの。ショーブがかりも、いっぱいいるから、大変だ(笑)。
というワケで、日曜日。
最終レースが終わったら、悶クン。なんでもいいから、いっぱいゴチソウしろ(笑)。
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