若き血のイレブン
ワールドカップは、ブラジルの黄色いユニフォームが目に沁みる。
あれは、1980年前後の、ちょうど今頃だったか。大学をクビになって半年。さてこれからどうしたものか。
ふとした機会を得て、久世光彦サンのテレビ制作会社で面接を受けることになり、赤坂へと向かう。
田舎ものゆえ、赤坂という地名を聞くだけで身が縮こまる。加えて、梅雨の合間の、うだるような暑さだ。
緊張感をどこかに置いて行きたい。
赤坂見附の駅を降り、古めいた喫茶店で、いろんなものを、やりすごしておこうか。
「いよ。マスター、久しぶり」と、ひと声かけながら、次に店の扉を開いた客は、毒蝮三太夫サンだった。
テレビかラジオの打ち合わせらしく、賑やかな声が聞こえてきたが、別の人生みたいで、なんだか上の空。
テレビでは、ワールドC。ジーコにソクラテス。そして元鹿島アントラーズの監督の誰それが、当時の世界最高のトライアングルを形成していることを伝えている。
だけども、問題は、今日の面接。
親にも愛想を尽かされ、半ば勘当状態。おれの人生は、これからどうなるんだろう。
グランドに射す、スタンドの大きな影に、カナリア軍団の黄色のユニフォームが躍るのを見つめていた、粘るような夏があったなぁ。
なんて、二年前から、長友に似た、ペヤングソース焼きそば顔の友人と、競馬付き合いをしている。
本田クンは、嫌いじゃないんだけど、中学校の時の、ベース板アタマの中谷秀樹クンに似ているのがね。
ワタシのひとつ前の席だったんだけど、背筋がピリッとしすぎている上に、やたら頭がデカい。前が見え辛かくて苦労した覚えがある。
酒を飲むなら中沢で、なんかめんどくさいことが起こったときのために、長谷部とも仲良くしておこうか。
でも、友達になるなら、やっぱ松井かなぁ。
自転車でどこまでもどこまでも走ってくれたり、3泊4日の無人島探検なんか、一緒に行ってくれそうな、野獣タイプのように思う(ついでに、火もおこしてくれそうだし)。