「函館よいとこ、の巻」
あと2週で今年の函館競馬が終了する。
今年も行けなかった。
夏のローカルでもっとも訪れたいのが函館なのに。
「何とか、来年は」と思うのですが。
初めて行ったのが、2000年6月16日の金曜日。
明日からに備えて、その日は五稜郭とか、土方歳三の墓とか、函館山とか、「新撰組」や「戊辰戦争」に関する歴史のお勉強なんぞをして、寿司屋でたらふく食って、湯の川温泉の「竹葉新葉亭」という宿に戻って、玄関先でそのニュースを知った。
「皇太后さま、ご逝去」
この日の午後4時46分、97歳でお亡くなりになったのだった。
結果、土曜日の競馬は中止。
月曜日に代替競馬。
そして、日・月の競馬では、ファンファーレや入場行進曲も自粛し、何とも静かな競馬だったことを覚えている。
それはさておき、これで土曜日がまったく白紙になってしまったのだ。
編集長は取材もできないし、1日分の取材費がかさむと嘆いていたが、初めて行ったわたしは、物見遊山もあったから、不謹慎な言い方だが、嬉しくてたまらなかった。
さて、土曜日。
編集長も腹を決めた。
ちょうど、北海道でタレント活動をしている玄武さんが、何かの番組でイカ釣りをレポートするために函館に来ていたので、それに同行することにした。
玄武さんは、元関取。
天才バカボンの化粧回しがトレードマークだったそうだ。
廃業後は、タレント活動と札幌でちゃんこ料理屋を経営している。
函館山を回るように航行しつつ、船長さんからイカ釣りのイロハを教えてもらったのだが、まったく釣れず。
あれ、やはりコツがあるんでしょうな。
最後は、同情してくれた船長さんに任せて、海から引き上げるところだけやらせてもらって、釣った気持ちになったのでした。
ああ、情けない。
でも、飴色のイカを刺身にしてもらうと、それはそれは、この世のものとは思えぬほど美味かったな。
それが忘れられなくて、毎年、心は函館に傾くのである。
「イカは毎日食っても、飽きねえのさ。母ちゃんは、毎日は食えねえけど。グへヘ」
こう言って笑う地元の漁師さんの笑顔が、また屈託なくていいんだ。
翌日の競馬。
メインレースは、900万下「駒場特別」。
1着ハギノハイグレイド(6番人気・松永幹)、2着エイキューガッツ(1番人気・四位)で、馬連1560円。
頭ン中が旅行気分では、もちろん当たるわけがない。
カーカーカー。
函館のカラスは、もっといい鳴き声をしていたような……。