「寺銭・墓石・陰毛の巻」
ようやく政府が重い腰を上げた。
競馬法を改正して控除率を下げ、その分、払戻金が増える閣議決定をした。
いろいろな評論家が言い続けてきたこともあり、また、年々売り上げが落ちているという現実を見て渋々、法改正に挑んだということでしょう。
少しでも払戻金が増えるのは喜ばしい。
もちろん、当たればの話だけど。
控除つまり寺銭は、そもそも、江戸時代に博打を寺社で催し、その場所代として寺に払われてきた名残。
たとえば、「逃げ込み寺」というように、そこは独立された空間と認められて、奉行からの支配を免れていたそうだ。
それを当て込んで、博徒が寺を使ったという。
そこで博打をしていても、誰もとがめる権利を持たないのだから。
寺としても、場所代が入るから、双方まるく収まっていた。
住職もいないような田舎の寺で、お堂を開けると無法者がチンチロリンをやっていた、なんてシーンが映画にあるが、寺は博打と切っても切れない場所だったようだ。
いわゆる「博徒」とは、一般に「金を賭ける人」として認識されているが、本来の意味は「胴元」のこと。
自分は場所を貸すだけで、それによって上がる寺銭で生きている人のことをいったそうだ。
博打をするより、よほど儲かるのだから。
そこで博徒はゲンを担ぐ。
勝負運に強かった清水の次郎長にあやかって、その舎弟である「吉良の仁吉」や「森の石松」の墓石が削られていたという話もある。
それをお守り代わりに持ち歩いていた。
現在でも、その手の匂いのする故人の墓石が削られていることがある。
墓地を歩くと、金網で守られている墓石を見かけることがあるが、それがそれである。
戦争で武運のあった海軍大将の墓とか、ギャンブル好きの文化人の墓とか。
また、女性の陰毛を腹巻に入れる、というのもゲン担ぎのひとつ。
一説には「3本」がいいといわれているが、それはどうだか。
戦時中にも、妻や恋人の陰毛を持って戦地に赴けば鉄砲玉に当たらないと思われていた。
女性の持つ神秘性が、そうさせたのであろう。
今でも「上げマン」などという言葉があるから、やはり、そういう何かが影響するのかも知れない。
カーカーカー。
そんなことを書いてきて、「まさか」と思って調べてみると、「仁吉の墓石の欠片」や、「陰毛」を売っている商売があるんですね。
まったく商魂たくましいと言うほかないなぁ。