道悪は予想も空っ下手
安藤広重の浮世絵の風景みたいな、大きな雨が降り始めたダービー当日。
土砂降りの日は、窓から大きな雨筋や雨音——時折遠く近くで鳴る雷の稲光や音を聞きながら、やんややんやと拍手するのが好きな、引きこもりの丹下です。
というワケで、ダービー当日は、午後からの予想と馬券が手に負えなくなったワタシ。
7レースのモンテフェニックスを見つけたまではよかったけれど、馬券は人気馬への馬連とワイドという消極さで、単勝3090円を逃してしまい、カっとなって、「道悪巧者」と決め打った、8レースの青嵐賞のダイワバゼラードも、9レースのショートローブスも、高脚を使って後方でドタバタ。
まったくのドーテン状態で、この馬場では先行策しか手がないということに気がつかないままで迎えたダービー。
アンライバルドは、心なしかトモ周りの筋肉が、ちょうどマイナス6㌔ぶんだけ落ちていたような気がしたが、いやいや。ダービー仕様へと、キリキリに絞り込んだに違いないと、アバタもエクボ状態(笑)。
それでも、リーチザクラウンは待望の耳袋。「頭落がメンコの上になっているから、これはつけたまま走りますよ」と、近しい人。
それだけは確認できたものの、他の馬はロジユニヴァースが、前脚のバンテージをギリギリと音がするくらいに巻き上げているのをチラリと見たくらいで、心おさまらないまま迎えたダービー。
ああ。アンライバルドのハミ受けが硬い。
良馬場なら、多少折り合いを欠いても、下半身そのものには、あまり影響がないように思うが、この不良馬場だと肉体的な消耗は計り知れない(たぶん)。
3コーナー過ぎでは、肉体も心も萎えてしまったか。それでも懸命に岩田が馬を動かそうとするものの、バランスを失ってヨレヨレ。
対する、最大のライバルと睨んでいた武豊のリーチザクラウンは、2コーナーを抜けるまでは、ロスを覚悟で馬場のいい外めに持ち出し、芝を選びながらジョーカプチーノの背後につける。
武豊の緻密さと大胆が、蘇ってきた。
しかし、直線入り口。ジョーカプチーノを交わしたところで、一瞬ヨロめいたその瞬間、内からスルスルとロジユニヴァース。
1枠1番を利し、ほぼ2400mをピッタリ走る、一か八かの決め打ちで、リーチを交わしたあとは、しゃにむにゴールへ向かってひた走る。
この馬場に、心折れない馬も立派だったが、ダービー制覇まで、長い間心が折れることがなかった横山典クンも立派。
生涯忘れられない、雨のダービーだったなぁ。
なんて、「皐月賞は、トモが本物ではなかった」といいつつ、ロジユニヴァース陣営は、騎手も厩舎も、正直半信半疑のまま、乗り込んだダービーだったように思う。
できればそれを、皐月賞前にオープンにしても、マスコミも競馬ファンも納得できるような報道態勢が叶えば、競馬はプロ野球やサッカーを超えて、もう一段上の娯楽に変わるような気がするが、うーん。
なんて、新聞記者というのは、人が喋った言葉が、いつの間にか自分の意見にすり変えるのを得意としている人種とも言えるが(笑)、記者は情報を伝達すると同時に、自分の見た目・感じたことを発信する立場でもある。
専門紙出身の予想家であるワタシは、どちらかというと後者のほうを大事にしているのだが、下手な予想も含め、まあマスコミサイドにも問題ありありだけど(笑)。
心が折れたままの夜の府中。
なんだか大きな声も出ないし、飲み会でちょっと嫌なことも言われたりしたが、ダービーも終わったことだし、これから少しの間、気を遣わなくて済む人と、気楽にドンチャカやることにしようかなぁ。