さよなら、ショコラ
子フグ1号、卒業旅行から帰還。
帰宅の翌日、この一週間、ずっと横になったままだった駄犬が逝った。
痛いんだろうな。苦しいんだろうな。
しかし、一言もうめき声をあげず、荒い息遣いで、じっと伏せたまま。
事切れる1時間前だったか。キャンキャンと鳴き声を一つ二つ。
この5~6年。足の怪我や病気で、ちゃんと散歩もさせてあげられず(世間の子供たちが、たぶんみんなそうであるように、娘たちも可愛がるのは最初だけだったかも)、いつも恨めしい目で見つめられていたような気がしていたが、朝、ポストに新聞を取りに行く前、トイレに行く前、「おい」と声をかけた駄犬は、もういない。
リードや犬小屋や、いつも座っていた毛布が、まだ転がったままだ。
14歳と少し。
世の中の誰でもが、そう思うように、小さくとも一戸建てを買ったのなら、そりゃあ犬だろ。
長女8歳、次女5歳。
「パパ。名前はコロかな。やっぱ、ショコラかな」。
小フグ1号は言ったが、ワタクシが8歳の時、近所で生まれた野良犬の仔を、仲間と育てようと画策した時。その犬につけた名前も、コロだった。
父娘二代にわたる、無知や馬鹿さ加減に、思わずのけぞってしまった覚えがある。
でも、まだ愚かなだけの娘たちと、幼犬が、「原っぱ」と名付けられた、草ばかりが生えているだけの公園の丘を、「パパ~」「ワンワン」と、わさわさと風を切ってワタシに走り寄ってくる風景は、本当に月並みだが、人生で一番の幸せだった。
子フグ1号に2号。キミたちが大きくなって、そして子供が生まれたら、また犬を飼うことがあるかもしれない。
その時、どういうお母さんになっているのだろうか。
さよなら、ショコラ…。