坂の上の雲 そして勝利
中山の急坂は高低差、約4メートル。直線の坂下からは、ゴールも勝利も見えない。
有馬記念当日は、たぶん晴れ。
ジョッキーたちの視線の先の、坂の上には、ぽっかりとした雲が浮かんでいるかもしれない。
坂の上の雲を、ルーラーシップで掴みに行く。
有馬記念の予想は、以下の通り。
【有馬記念】
あくまで個人的感想だが、ルーラーシップは、「史上最強」を言われる3歳世代の中にあっては、もちろん。過去目にしてきた競走馬の中でも、1・2位を争う素材ではないか。
ダービーのパドックに、ゴール前、もうひと伸びした5着のダービーに、「ひと夏越せば。秋になれば」——陶然となった覚えがある。
なんて、3歳春は、爪が伸び切れず、左右のバランスが取れずじまい。右左の脚の長さが違えば走りにも歪みが生じ、ここぞというときに加速が利かず、折り合いにも苦労。アルメリア賞の接触で、馬体を消耗したりもした。
なんとか馬体を矯正し、プリンシパルSで権利を得てダービーへ駒を進めたが、ライバルたちに比べると、いかにも身体つきが幼い。消化不良の5着で春シーズンの幕を閉じたものの、ひと夏越して秋。爪の不安も解消し、四肢はまっすぐ。トモ回りの筋肉が、はちきれんばかりに膨らみ(前走比12㌔増の498㌔)、復帰緒戦の鳴尾記念で、当該世代および古馬を、躍動感あふれる横綱相撲で一蹴。
荒っぽい走法とはいえ体質強化は歴然。春と違って、道中折り合いに苦しむシーンも皆無。正攻法の横綱相撲で押し切ってみせた。
レース内容も秀逸なら、スタート後の1Fとラスト2Fを除き、すべてが11秒台というレースラップも強靭。マイル通過・1分32秒8という確かなラップを踏襲し、レコードに0秒2差の1分44秒9をマーク。GⅠレベルの精度の高い数字を示してみせた。
ブエナビスタを打ち負かすとすれば、それは能力。ブエナも同世代のペルーサも超える、3歳屈指のルーラーシップのポテンシャルよりほかはない。先行押し出しの真っ向勝負で、次代を切り開く有馬記念だ。
ちなみにエアグルーヴ一族の特徴は、ややステイヤーよりの晩成血統。鞍上は意表突く先行策で、ハーツクライを駆りディープインパクトを退けたルメール。打倒ブエナ、いざ大仕事の準備は整った。
越えなくてはならないカベは、ブエナビスタ。天皇賞、降着となったがJCは鮮烈。現役最強馬であることは疑いはない。
しかし、木曜日発表の体重が460㌔(JC時は462㌔)。輸送を考えると、450㌔を切ってくる可能性も捨て切れない。
ブエナに目に見えない疲れやリキみが生ずれば、つけ入る隙はある。
一角崩しは、ルーラーと双壁のポテンシャルを有するペルーサ。JCは、再度の出遅れ。馬込みにモマれ、上がりの数字以上に窮屈なフォームで脚を余してしまったが、天皇賞の怒涛の末脚を見直し。
やや順調さを欠いたとはいえ、グランプリ2勝馬ドリームジャーニーの底力と中山適性は軽視できない。オウケンブルースリも、JCをたたいて急上昇。こういうシーンでの横山典は怖い。
連穴はトーセンジョーダン。アルゼンチン・2分30秒0は、過去十年で最速。ちなみに、アルゼンチンを2分30秒台で駈けた馬たちは、いずれもごく近いGⅠで勝ち負けしている。
◎ルーラーシップ
○ブエナビスタ
▲ペルーサ
☆ドリームジャーニー
△オウケンブルースリ
トーセンジョーダン
ヴィクトワールピサ