グリーンウオッチング Vol・23
一年一年風景が違う
アグネスタキオン産駒の人気を知ってはいたが、先日セレクトセールでは、上場されさえすれば、すぐに買い手がつき、需要側の強固な意志の強さみたいなものが見え隠れしていた。
人気があれば当然価格にハネかえる。
3700万円余の平均価格を大きく上回る形で、相次いで落札されていたが、生産の柱でもある社台グループも、さてどの馬を上場させるのか。クラブや庭先取り引きもあるだろうから、振り分けには相当悩んだろう。
タキオンが手に入らないと思えば、ネオユニヴァース。
ファーストクロックは現1歳。
競走馬として、まだ結果を出していないが、産駒の質や完成度が総じて高く、当たりハズれの少ない、コンパクトなマイラー体型の仔が、なるほど目に付く。
これを追う形で、同世代のキングカメハメハが人気を集めていたが、個人的には、産駒によってバラつきもあるような印象を受けた。
シンボリクリスエスは、なんだか半信半疑。
クロフネやマンハッタンカフェは、少し飽きられたのかなぁとも思うが、その間隙をつく形で新種牡馬デュランダルが台頭。
デュランダルを含め、一族自体は遅咲きに属するものの、上場された産駒は、父の馬体の造りが色濃い、トモの丸々としたバネのあるスプリンターよりの仔が多かった。
日本の生産馬は、もはやマイル〜中距離ベースの芝の高速決着においては、タキオンを筆頭に、SS系主導で世界のトップレベルにあることは疑いはない。
ただしスプリント戦線は混沌。
確たる柱となる種牡馬が見当たらない(スプリンターズSを例にとればわかりやすいが、近年は香港やオセアニア勢の勢いが目立つ)。
アグネスタキオンやネオやカメハメハで理想を追う一方、でデュランダル人気は、できるものなら2歳早期から結果を出して欲しい、馬主サイドの願望が強く反映されているのかもしれない。
セリというのは常に人の思惑によって動くものだが、実績のわりに盲点となっている種牡馬もけっこういる。
例えばフレンチデピュティにクロフネ。
そしてフジキセキといった産駒たちは、ダート系のマイルに実績が集中し、方向性が確立されているためか、アドマイヤムーンの弟たちのような、よっぽどの馬を除けば、比較的リーズナブルで取り引きされていたように思う。
まったく評判に挙がらなかったが、トワイニング産駒の中にも、距離適性さえ目をつぶれば、これはという馬がけっこういた。
馬というのは一年で評価が上下する。
ディープインパクトの仔が来年上場されれば、ガラリと様相も変わってくるに違いないし、となれば、その時々において、馬選びにも選択肢が広がってくるハズだ。
なんて、セレクトセールでは、一日中飽きもせず、パドックを周回する馬たちを眺めていたが、値段云々はともかく、ワタシにとって、一年で一番密度の濃い一日だったような気がする。
しかし、ノーザンF生産馬は、上場馬すべてが完売。
なるほど、パドックでは、よく歩くし、食べ物が違うのか肌艶も抜けていい(ダーレーの馬の皮膚感や、大人びた仕草にも驚いた)。
セリに対してどう馬を作っていくかという命題を、ハッキリと意識していることもあるんだろうが、生まれて3ヶ月の段階でここまで馴らし込んでいるとは…。
うーん。
改めて思うが、馬は一年一年、風景が違うんものなんだなぁ…。