グリーン・ウオッチング Vol・20
スピードは裏切らない
クラシックを柱とした、春のGⅠシリーズも間もなく終わりを告げ、舞台はローカルへと移る。
函館開催を目標に、第一陣がすでに現地入りして時計を出し始めたが、馬の後を追うように、現場記者も北海道に出発。
「じゃあ、また3ヶ月後に会おうな」
東京競馬場でも、しばしの別れを惜しむ、TMたちのやりとりを耳にしたが、夏のローカルに替われば、3歳馬と古馬との戦いが始まる。
さて、古馬を相手のローカル。最初に勝ち負けの口火を切るのは、スプリント戦となるのか。
成長曲線のゆったりとしたステイヤーと違って、スプリンターは、天性の資質であるスピードが命。
スプリンターは、デビューから早い時期に、将来像や展望が、ラップや走破タイムとなって表れるという特性がある。5〜6月期の今の時計やラップが、他の距離を走る馬達より、より重要になってくるが、では先週のユーチャリスはどうだったか。
6月9日に中京には、9Rが3歳1000万のあじさいS。メインの11Rに古馬準OPの飛騨Sが組まれていたが、その通過ラップを比較すると次の通り。
[あじさいS] 1分8秒4
11・7−10・4−11・1−11・3−11・6−12・3
(前半3F・33秒2−後半3F・35秒2)。
[飛騨S] 1分8秒3
12・0−10・5−11・1−11・3−11・4−12・0
(前半3F・33秒6−後半3F・34秒7)
二つのレースのラップを辿ると、明らかに前者あじさいSが上。キャリアを積んだ古馬だけに、後半3Fを無難にまとめ、勝ち時計こそ五分に持ち込んだが、絶対的なスプリント力の証明である前半3Fの数字は、あじさいSの方が古馬の1600万より優っていることがわかる。
競馬の見方はいろいろあるだろうが、レースの質や成績に直結する競馬とは、いかにHラップに耐え、どれだけ粘り通せたかに尽きる。
4着には敗れたが、ユーチャリスの前回は、かなり密度が濃いし、あじさいSはプラス10㌔と余裕残し。当然上積みも期待できるし、初の古馬対決では斤量面でも恩恵がある。
しかも、元々は平坦が得意な米国系のマル外。夏のローカルは舞台としても絶好だろう。
ちなみに、今週の中京のマラヤンTに出走するリリウオカラニの前走の前半3Fは、なんと32秒8という快ラップ。
前後半のラップの差が、やや激しいだけに、開催末期のパワーを要する昇級緒戦は、やや厳しいかもしれないが、所を替えたパンパンの良馬場のスプリント戦になれば、いずれ32秒8のスピードが結果となって結び付くハズだ(4歳馬だがキャリアは12戦。平坦ダートも得意。新潟の直線1000㍍競馬も、おもしろい)。
東京3Rの未勝利戦に出走するリサイトアチャームは、やや湿り気を帯びた、時計の掛かる良馬場が理想。折しも、東京西部は雷雨。季節の変わり目の遠雷は、初勝利の前兆なのだろうか。