「丹下、腹を決めるの巻」
考えに考えたあげく、丹下日出夫がこのブログの第1回目のタイトルを、
「♪まっこ〜 甘えてばかりで ごめんね♪」
とした。ここに、彼の並々ならぬ決意が隠されていることは明らかである。
この「愛と死をみつめて」は、06年3月18、19日の2夜にかけてテレビ朝日で放送された。主演は、広末涼子と草剛。この二人の共通点は、かつて、劇作家・つかこうへい氏の舞台を踏んだことにある。広末は03年「飛龍伝」と「幕末純情伝」、草は99年「蒲田行進曲」。“たかが、アイドルごときに何ができる”と高を括っていたのであるが、あに図らんや、完璧に演じていたことを覚えている。広末は、たしか妊娠中であった。
その、つか氏はつねづね、「台本は書くのではない。役者に書かされているのだ」と言っている。つまり、優れた役者に出会うと、自然に台詞が湧き出てくるというわけだ。
翻って、丹下の主戦場は、競馬。06年3月9日、美浦の自宅にて、岡部幸雄元ジョッキーは、ある出版社のインタビューを受けた。取材者が、「なぜ、38年間も騎手を続けられたのか」と問うと、こう答えたそうだ。
「シンボリルドルフのような馬に、再び出会いたいから」
つまり岡部氏もまた、馬に乗っていたのではなく、「乗せられていた」のである。優れた馬に出会うと、自然にジョッキー魂が揺さぶられるというわけだ。
自らを昇華させるために、つか氏は優秀な役者を探し続け、岡部氏は優駿を追い続けた。
賢明な丹下ファンであれば、もうお分かりであろう。そうなのだ。丹下は、競馬ファンに、「自分の予想で馬券を買うのではない。丹下の予想に買わされているのだ」と言わしめるべく、同時に、自らが死して後、「あのような予想家に、再び出会いたいものだ」と強く思わせるべく、タイトルに誓いを立てた。絶対に、そういう予想家になるのだ、と。
そうでなければ、記念すべき第1回目に、
「♪まっこ〜 甘えてばかりで ごめんね♪」
などという、ゆるゆるのタイトルを付けられるはずがないではないか。でしょ?
「誓いを立てている丹下日出夫」
……カー、カー、カー。カラスが鳴くから、もう帰ろう。