背で吼えてる唐獅子牡丹
「土曜深夜の映画興行は、30年前は“オールナイト”で、今は“レイトショー”なんですよね。その違いに、丹下サン、ついていけます?」
30年近く前の土曜の夜は、団鬼六の禁縛シリーズ3本立てや、若大将シリーズのオールナイト上映を、大学のある京都の映画館で、毎週のように、一人ポツネンと夜明かししていた、青大将が膨れたような顔をした栗岩旧太郎が、思案気に漏らす。
レイトショー?ふふん。当時、吉祥寺では、ルキノ・ビスコンティのレイトショーをいち早くやっていたんだぜ。
村川透の“遊戯”シリーズも(主演・松田優作)、高倉健の“網走番外地”だって、なんでもこいや。
でもって新宿では、いろいろとフィーバーしたあとのサタディーナイトの終わりは、新宿三丁目の“いれーぬ”で、おかま二人をからかって締めるのさ。
おかまに、一度も言い寄られたり襲われそうになったことがないのが、なんか悔しいというかムカつくが、ドバイWC・パブリックビューイングも、へっちゃらよん(たぶん)。
なんて、新宿コマ劇場あたりの大箱の映画館が消え、300〜400人程度収容のミニSシアターが、雨後のタケノコのようにオープンしたのは知っていたが、しょんべんくさい、昔の映画館と違って、椅子もフカフカ。
でもって、画面だけは大きいままだが、単純に映画は、デカからこそ映画です。
会場入り5分前。ゴドルフィンマイルが映し出され、グロリアスノアの4着健闘に、春の海のような、沁み入るような拍手が起こる。
おお。司会の小倉サン、岡部玲子サン。掴みはオッケー。
元ホースニュースの辻三蔵クンが、うっしゃ!と掛け声一発。ドバイWC(トイレじゃないよ)の、始まりです。
まあ、変な知ったかぶりだけはよそうと決めていたのだが、ローレルゲレイロ君も頑張った。交わされても4着にネバネバ、温かなコーフンをブエナビスタに繋ぐ。
でもって、ドバイシーマクラシック。前半1000mを過ぎたあたりから、前から後ろから横から、小さく削られ馬体が揺れる。
直線入り口、半ばと、前が詰まっては開く、その度に、全員が大きなため息をついたり、小さな悲鳴が上がったり、大きな画面だと、反応のポイントがみんな一緒で、こりゃ楽しいワ(よく競馬を知っていますね)。
ま、ゴールデンシャヒーンのレース後の解説で、
「日本馬ローレルゲレイロにとっては、あひぃ〜んな特別でしたね」と言ったら、会場が一瞬静まりかえってしまったりもしたが(笑)、まあいいか。
メインのWCまで、ちょっとした休憩時間。ワシワシとビールを流し込み、ちょいと煙草を吸いに喫煙ルームに入ると、
「おお。丹下さん」の温かい声。
「ばかで〜〜す」と返したら、どっと笑いが起こって、ヤングのハートをワシ掴み!——と思ったが、その後の一瞬の沈黙を捌ききれなかった。
次からは二の句を勉強しような。
レッドディザイアは、残念ながら着外に終わったが、しかし堂々の好位追走——四方を30センチしかないんじゃなかろうかという、厳しい馬群の中に身をおいても、ぐっと我慢はできていた。
直線外に持ち出すコース取りも、真っ向勝負の「勝ちに出た」競馬。残り1Fで、何かがプツリ切れてしまったが、終いだけのお気楽な競馬で、追い込み届かずの4〜5着よりも、個人的にはいいファイトだったように思うが、さて(花火がマズかったかなぁ)。
戦い終わって朝がきて、みんな一斉に席を立つのかと思ったら、ほとんどの人が残って、プレゼント抽選会。
ワタシの秘蔵品のアレも(腹黒い悪妻が、いつか値上りするのではないかと、コッソリとためていた、ナリタブライアンのテレカやディープインパクトの三冠記念切手等)、何故かちょっぴりウケた。
30年前、オールナイトを観た後は、みんな高倉健のように背中を丸めて映画館を扉を開けたもんだが、ペリエになりきって、ムチを振り回す仕草の、あのバカ大将は、あれれ。山田乗男だよ(笑)。
《網走番外地をどうぞ》
http://www.youtube.com/watch?v=FcuBOBs7FqA
なんて、入場者の大半が、20代前半の若人だったように思うが、競馬に熱中し始めた頃のワタシの顔も、あんなふうに輝いていたのだろうか。
【業務連絡】
今週末は、武蔵野公園の桜も見頃。吉祥寺のH・H、M・H夫妻、土曜日、競馬でも見ながら花見でもやらないか。
来る時は、駅前のヨーカドーの地下の名品売り場で、越の寒梅を売ってたから(2890円)、キミが一升下げきなさい(笑)。
最近の『丹下の懺悔』の記事
- 薔薇が咲いた2024年5月3日
- 2023~24年の指名馬30頭を振り返る「丹下のザンゲ」(21~30位編)2024年5月2日
- 2023〜24年の指名馬30頭を振り返る「丹下のザンゲ」(11〜20位編)2024年5月1日
- 2023〜24年の指名馬30頭を振り返る「丹下のザンゲ」(1〜10位編)2024年4月30日
- 恵みの雨2024年4月26日
- キミにじゃぶゝ2024年4月20日
- つくしんぼう見っけ2024年4月12日