早春の3月や初夏の7月の北海道なら、毎年の恒例行事みたいなもんだが、9月の北海道を訪れるのは、これが二度め。
「丹下サンって、牧場に行ったことがないの?。なら、9月のツアーに行きましょうよ」と、声をかけられ、ノコノコ社台グループのツアーにくっついて行ったのは、確か20年近く前だったような気がするが、あの頃は、ただゝ馬に夢中で、9月の北海道は、あちこち花だらけということに、まるで気がつかなかった。
道端を縁取る、あのリンドウのような青い花は何だろう。背の高い黄色い花は、まさか背高泡立ち草じゃないよね?
まだワタシが10歳に満たないころ、山陰線の蒸気機関車に揺られ、廻り灯篭の絵のような景色の中に、駅近くになると必ずといっていいほど、可憐というよりは雑草に似た、黄色い背の高い黄色い花が咲いていた。
「あれは背高泡立ち草というのよ。アメリカからの外来種で、輸入穀物と一緒に貨物にまで紛れ込み、線路沿いに蔓延るようになったみたいね」と、母が指さすシーンが、ふと蘇る。
姉妹ではなく、ワタシ一人を連れて、母の姉の住む小倉への、行き帰りのワンシーンだったが、あの頃の母に、さて何があったのだろう。
夜遅く、低く小さな声で、母と母の姉が何かを語り合い、母のすすり泣く声を、おぼろに覚えている。
遠い昔の話だ。
丹下家は、どこの家庭にもある揉め事も、少しはあったけれど、普通以上に穏やかな家だったように思う。
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