グリーンウオッチング Vol・29
悩ましい
プレサンティールが、京都の芝1600mで、三戦目にして未勝利を脱出した。 前走比12㌔減。この一族は、なべて腹袋がたっぷりと発達し、いつも重いのではないかと感じさせる馬が多いし、矢作厩舎も通称「鴨胸」と呼ばれる産駒を好む傾向にある。
ギリギリに絞り込み、体重を減らて勝つのではなく、馬体を大きくすることで将来につなげていくことが多いのだが、10㌔以上のマイナス体重は、かなり勝負がかりの気持ちも強かったのだろう。
相変わらずゲートにクセはあるが、大きなストライドで外目から進出する横綱相撲。
レース内容としては、かなり上出来の部類。
しかし、1分37秒0は、良馬場に回復する過程の、まだ渋り加減の芝コンディションとはいえ、少し悩ましい。
半兄のココナッツパンチは、勝ち星こそ1つだが、知ってのとおりデビュー二戦目で弥生賞を2着。
ダービー出走はならなかったものの、同日の最終に組まれていた目黒記念で、古馬GⅠ戦線の柱とも目安ともなるべき、あのポップロックとハナ差の勝負を演じている。
父がマンハッタンカフェからアグネスタキオンに代わり、しかも牝馬。クラブ馬として一口参加するには、募集時期も微妙だったし、いろいろと悩まし馬だったろう。
実は半兄のココナッツパンチを、一昨年の春、デビュー前に社台Fの周回コースで実物をみたことがあるが、社台Fの面々が、
「あの馬。走りそうなんですよね」
と、口を揃えて言っていたし、隊列を乱しかねないほど、実にバネのある動きが目に付いた。
しかし、ココパシオンの仔は、死産や流産も含めて、ココナッツパンチが8クロップ。
産駒は気性の激しい仔が多く、やや手垢がついた血統に感じる。
馬そのものは抜群にいいのだが、距離や能力に限界があるのではないかと、つい失念してしまった。
同時期に同じくらいの感触があったアサクサキングスに(菊花賞馬)、つい目がいってしまったのだが。
実際のところ、ココナッツは、脚元や気性の関係で、デビューが3歳春の2月と遅め。
「あの時の、あの馬だったのか」
と、記憶の糸を辿り、やっと思い出すほどだったが、新馬戦以降の快進撃はともかく、目黒記念後に休養を余儀なくされたとなると、また複雑。
今年の2歳を見る際は、そのココナナッツパンチを糧に、同じ間違いをしないよう、慎重に馬を見たつもりでいたが、キャプテントゥーレとシャドウデイルが、ココナッツと印象がダブって浮上してきた。
しかし、配合や牝馬代わり等々、いろんな面で条件は異なるだろうが、2歳秋の今に、3戦できるプレサンティールのほうが、後々まで楽しめるのではないかと思うと、また悩ましかったりもする(笑)。
ちなみに今年3月。
「不思議なんだよね。ウチの繁殖で、もう何番仔になろうかという、少し限界みたいなものも感じ始めた母系から、また走る馬が出始めたんだよ」と、社台Fの吉田照哉サンが、ふとつぶやいた、その矢先。
毎日王冠のチョウサン(祖母はクラブ馬で未勝利)。そして、スプリンターズSのアストンマーチャンと、次々と質の高い重賞ホースが出現。
さて、そうした兄弟の何を重視すれば「当たり」が出るのか。何頭もの兄弟を見比べて感じた何かが、やっぱり大事になるのだろうが、競走馬って、ホントに悩ましい…。